このページは「ハザードマップをめぐる誤解」に差し替えます。
「リンク切れ」にならないよう(非公開設定とした上で)一応維持してありますが、「ハザードマップをめぐる誤解」で、「シミュレーション」および「ハザードマップ」の関係(根拠関係と差異)について検討してありますので、ご覧ください。
12, Sep., 2015
前のページでは実際の浸水範囲について、内閣官房情報調査室と国土地理院が公表した地図を見ましたが、ここでは、国土交通省関東地方整備局下館河川事務所が公表している「鬼怒川・小貝川氾濫シミュレーション」を見ます。(9月12日時点でのウェブサイト閲覧ならびにダウンロードによるものです。)
下館河川事務所のウェブサイトの「河川・防災情報」のページは次のようなメニュー画面になっています。(http://www.ktr.mlit.go.jp/shimodate/simulation_pdf/)
鬼怒川の流域面積はかなり広いということがわかります。とくに、小貝川とは対照的に、上流の面積はきわめて大きいのです。
「鬼怒川」「小貝川」それぞれ、20kmごとのボタンを押すと、次のようなサブメニューが現れます。距離は、茨城県常総市の南側の茨城県守谷市の利根川との合流地点からの距離です。これは、0から20kmまでのサブメニュー画面です。(http://www.ktr.mlit.go.jp/shimodate/simulation_pdf/ki01.html)
緑のドットが右岸(西岸)、橙のドットが左岸(東岸)です。
今回の氾濫地点は2か所あります。最初に「越水」が起きたのが、上流側の常総市若宮戸(わかみやど)で、9月10日午前7時40分、つづいて「決壊」がおきたのが、同市三坂町で同10日午後0時50分でした。いずれも鬼怒川の左岸=東岸です。
シミュレーションは、おおむね2ないし3kmごとにボタンを設け、それぞれ浸水予想図を示しています。それぞれのボタンの位置がとりわけ危険性が高い、決壊が予想される、ということなのか否か、明記されているわけではありません。しかし、利根川との合流点に近い茨城県守谷市付近には、緑のドットも橙のドットも打たれていないところをみると、ドットの並んでいる常総市内は危険であるという認識が前提にあるとみるのが妥当のようです。
実は、下流側から2番目のドットのあたりから利根川(画面左下)と合流地点にいたる鬼怒川の河道は、江戸時代の開削によるもので、それ以前は下流から2番目ないし3番目の橙のドット付近から東方に流れ、小貝川に合流して一本になり、そこから利根川との合流地点に流れていたのです。開削された河道はおおきく迂回するように西へ、ついで南に向かいます。その南下する守谷市西部では、右岸は「菅生沼調整池」になっており今回の洪水によっても全面的に冠水しています。ですからこの部分の堤防は、あえて越流させる部分であり、水害としての「浸水」のシミュレーションの対象となっていないものと思われます。一方、守谷市最北部の左岸にドットが打たれていないのは、相対的に越流・決壊のおそれが低いものとされているようにも思えますが、実情はわかりません。ただし、この左岸のノーマークの部分でも、10日午後には、「決壊」ではないようですが、氾濫が起きています。茨城県つくばみらい市と守谷市の境界をはさんで、東西300mほどで氾濫し、幼稚園の敷地の一部、住宅の納屋の床面、畑、道路などが冠水しました。床上浸水とか自動車の水没などには至っていないようです。(ほかにも、さらに下流側の守谷市板戸井でも微高地の護岸の石垣部分の最上部まで水位が上昇したようですが、「越流」には至らなかったようです。)(この付近については、後日調査のうえ、もう少し正確なレポートをする予定です。)
さて、ドットは0.25km単位で、数kmごとに打たれているので、ピンポイントで危険地点を示しているとまではいえないようですが、それにしてもドットの打たれた一帯は「越流」や「決壊」のおそれがある、と国土交通省が認識していたとみてよいでしょう。「越流」した若宮戸(25.35km=利根川との合流地点からの流路の長さ。以下同じ)と「決壊」した三坂町(21.0km)に近い、25.25km地点からの浸水予想地図と、20.25km地点からの浸水予想地図を選んで、次に示します。(この点は誤解でした。もしそこで破堤したらこうなるだろう、というだけの話であり、破堤しやすさとは無関係です。)
今回は、2か所であいついで「越水」「決壊」がおきたことで、シミュレーションとは条件が大きく異なっています。また、上流の若宮戸が「越水」どまりなのか、それとも自然堤防が破壊されて水が東岸に流出し続けたのかさえ、はっきりしません。(数日後にある程度あきらかになった状況については、該当ページをみてください。)
しかし、シミュレーションの結果は、鬼怒川と小貝川にはさまれた地域はほぼ全部が冠水し、一部の標高の相対的に高い地区(いわゆる自然堤防に相当する部分と思われます)だけが浸水をまぬかれるというものでしたが、おおまかにいえば、そのとおりになったわけです。
あえていえば、どちらのシミュレーションも常総市役所のある旧水海道(みつかいどう)市中心部が浸水の南限となっていますが、先のweblogでも問題となっていたように、浸水はさらに南側まで及んでいるのであり、その点で、シミュレーションより、(2地点からの流入があったことなどからでしょうか)実際の流入水量は多かったのかもしれません。
なお、今回の水害で特徴的なのは、三坂町における決壊した堤防からの流水の勢いの激しさであり、堤防だけでなく、堤内(河道があるのが堤外)の地盤をおおきくえぐり、幾多の家屋を倒壊、流出、破壊したことです。ヘリコプターからの空撮ライブ映像から受けた素人の印象にすぎませんが、通例の氾濫にはない水流の激しさであったように思われます。
その意味で、シミュレーションは、氾濫面積にかんする「静的」なものにとどまっており、「動的」な氾濫の実態把握ではないことにも留意しなければならないと思います。