杉原千畝のまわりには胡散臭い賞賛者たちがうようよいます。ご本尊じたいが食わせ者である岡倉天心とは違って、杉原本人はたしかに正当な行為をなした人なのですが、シオニストとその追随者まで登場して彼をさんざん利用するに及んでは、いっしょに手放しで礼賛してばかりもいられません。2015年の「ISIS」による日本人人質殺害事件の最中にも、イスラエルを訪問した安倍晋三が現地で杉原を賞賛していました。
いまや日本の「国粋主義右翼」は向かうところ敵なしで、とうとう国会で「八紘一宇」称揚までおこなわれる時代となりました。「日本会議」の肝煎りではじまった茨城県立高校の「道徳教育」での杉原千畝の扱いをてがかりに、「国粋主義右翼」勢力の歴史修正主義イデオロギーのでたらめぶりを見て行きます。
歴史修正主義は、杉原千畝にかこつけて、大日本帝国時代の絶対主義的天皇制・帝国主義的侵略・軍国主義を弁護し賞賛するのですが、その俗受けする児戯にもひとしい事実認識やロジックは、いまや一部好事家の趣味的言説なのではなく、たとえば大都市横浜の中学生たちが、歴史修正主義の歴史教科書で勉強させられるところまできています。
なお、よく読みもしないで誰もがもちあげるハンナ・アーレントについても、少々注意を払わなければならないことにも触れます。20世紀屈指の哲学者であるハイデガーとヤスパースの「弟子」にして、戦後アメリカで活動した良心的「思想家」とされるアーレントはあまりに偉大すぎ、そのシオニズム擁護の姿勢を批判する人もほとんどいませんが(早尾貴紀くらいでしょうか)、とりわけナチズムとホロコーストを批判するアーレントの論理を、日本の歴史修正主義が大日本帝国の弁護と正当化に使っていることは無視すべきではないでしょう。アーレントは流用・悪用されただけと看做して通り過ぎるわけにはいかないと思うのです。
MMIX-MMXI