本名は「覚三(かくぞう)」ですが、あろうことか「天心(てんしん)」を名乗る仏頂面のこの男、若い頃は「日本美術の海外流出」に反対していたくせに、晩年はちゃっかりとボストン美術館職員におさまり、せっせと日本や中国の美術品を蒐集してボストンに運んでいました。ハッタリを効かすのが得意な男ですが、ずいぶんな話です。
そんな岡倉天心を、息子・孫・ひ孫たちや、後輩・子分・後任者たちが、いつまでも持ち上げています。彼らはそれで食べているのですから、少々の胡散臭さには目をつぶって売り込みを続けているのでしょう。小規模とはいえ、「岡倉インダストリー」として成り立っているのです。インドの詩人タゴールまで騙した岡倉天心という男、いったいそれほどりっぱな人なのでしょうか?
まずは「夢殿開扉」という不自然な事件から見て行きましょう。世間が歴史的事実だと思い込んでいるものの、出版された本のなかでその嘘っぱちぶりが暴露されているのでした。
MMVIII-MMIX