「オーディオ」の闇

 当今は、音楽を聴くのは(コンサートを除いて)、若年齢層では、無料の Youtube 動画や、配信サイトを「サブスク」して、スマートフォンとイヤフォンで、というのが普通のようです。いっぽう、中高年の少々経済的に余裕がある層では、高価な「オーディオ」機器を揃えて音質を追求する趣味の世界が、細々ながらも存続しているようです。

 Youtubeやサブスクだと、なにせ手元に何も残らないし、当今の演奏がほとんどです。過去の膨大な録音データから選択収集して、コレクションをつくることは困難です(電子書籍も同様で、プリントして残すこともできないので、配信企業が事業をやめれば、手元のデータも早晩消滅します)。廃れつつあるとはいえ、CDあるいはBlueRayで音や映像のデータを収集所蔵することが必要になります(これも、レーザーディスクとかVHSのように規格自体の消滅はありうるわけですから、配信よりは相対的には安定しているというだけです。石に刻んだところで、十戒の石板のように紛失してしまうのです)。

 

 CDの衰退は顕著で、とうとう金額ベースでLPレコード(英語では「ビニール」)に再逆転されたとのことです。CDは新譜はもちろん再版でも3000円程度ですが、クラシックでは歴史的名演などはセットもので1枚あたり500円以下で手に入ります。LPレコードは、1枚あたり5000円と異常に高価であるのも、そのような統計上の現象の理由のひとつでしょう。

 LPレコードは、傷・反り・埃・帯電などを避けることはできず、およそ実用に耐えるものではなく、CD登場(1982年)からわずか4年で、出荷枚数が逆転したのも当然です。富裕な骨董趣味人でもない限りいまさらLPレコードに戻ることはありえず、今後しばらくはCDに頼らざるをえないということです。

 

 「オーディオ」という世界はちょうどCD登場の時期辺りから、異常なほどの高額化、にもかかわらず性能の劣化が、一貫して進行し、いまやほとんど末期症状です。1980年代であればせいぜい数十万円で一式そろえられたものが、どんどん高額化し、20世紀末ともなると、CDプレーヤー、プリアンプ、メインアンプ、スピーカーがそれぞれ数十万円、「高級機」となると各々百万円以上がふつうになったのです。CDプレーヤーは、回転部分とDAコンバーター部分が別体となり、メインアンプは、LRチャンネルにそれぞれモノラルアンプをあてるようになり、ワンセット数百万円とか一千万円以上という問題外の高額化が進行しました。

 問題は、大金を投じてもたいした音ではないということです。オーディオ専門店や、専門売り場で聴く、居並ぶ高額機器の音たるや、あきれるほど平凡(控えめに言って)です。数百万円を投じてもこのような状態で、何を買っても満足できないのです。オーディオ専門雑誌のマニア訪問記事をみると、その誰もが複数の機器(スピーカーを何対も、アンプを何台も)を並べたてています。これまでも、そしてこれからも絶え間なく買い替え、買い増しを続けるのです。接続コードやスピーカーコード、電源コードも、何十万円もするものを購入しているのですが、それでも満足すべき音は出てこないのです。

 こんなことですから、企業自体も存続があやしくなり、20世紀後半には国内のみならず世界的にもおおいに繁栄した日本のオーディオ機器産業はほぼ壊滅状態となり、大手電機メーカーはオーディオ機器製造から撤退し、オーディオ専門専業メーカーも有名どころはほぼ消滅し、いまや数社を残すのみです。国内の携帯電話機の規格と機器製造の激減消滅であれば、アップル・グーグルのスマートフォン登場という根本的な外的要因によるものでしょうが、「オーディオ」機器にあっては特段の外因があるともいえず、単純に自滅したとしか言いようがありません。

 問題は、それでもオーディオ趣味の高額化、それにもかかわらずの性能劣化が進んでいることで(高額化しても、性能が向上するならまだよいのですが、そうではないのが悲惨なのです)、高額オーディオ市場は完全には消滅はせず、中高年齢の相対的には時間的金銭的な余裕のある層がいまだに餌食になっているのです。

 

 そういう状態を、「オーディオ・カニバリズム」「鬼門」と呼んで根本的に批判する人がいます。その人は、絶えざる研鑽によって誰でもが良い音を手に入れる理論と手法を確立したのですが、それだけでなく現行の高いだけでひどい音しか発しない「オーディオ」機器に代わる機器を製造・輸入して、しかも一桁どころか二桁も安価な価格ですべての音楽愛好家に提供するために起業したのです。そして、ここが重要なのですが、そこから聞こえる音は圧倒的にすぐれており、聞いた瞬間に心底感動させられるものなのです。

 当ウェブサイト記事は、ネット記事でよくあるような、でたらめな惹句を並べ客観的解説を装ってちゃっかり販売に誘導するような、当事者・当該企業によるステルス記事ではありません。「プロケーブル」と会社名を記すのみにします(容易にウェブサイトを閲覧できますので、リンクも置きません)。以下の各記事は、「プロケーブル」の主張や業務全体の概要についての把握を前提とするものですが、ここで、同社の主張を下手に要約して示すこともいたしません。同社のウェブサイトには膨大な説明が用意されています。必要があれば電子メールで問い合わせれば、懇切丁寧な説明を受けることもできます。

 同社の主張をじっくりと咀嚼しつつ、すこしずつ製品を購入し、日々楽しみながら音楽を聴く、稀有な体験をいくつか記すのみです。

 

 

音源からプリアンプ(ミキサー)への接続コードは、アメリカ合州国のものはBelden8412で、日本のものはモガミ2534で、ドイツのものはNeumannで、ドイツ以外の大ブリテン連合王国などのものはヴァイタルVAM-265を用いる、というのが基本的な手法です。しかし、近年のCD製造時の機器使用の変化により、モガミ単独ではなくカナレ4E6S+モガミ2534混合ケーブルが適合する場合が多く見られるようになりました。具体的にCDの品番も示したうで、試聴します。