学習指導要領

 文科大臣が告示する「学習指導要領」というものがあります。国会制定法ではありません。もちろん法的拘束力などない、憲法違反の行政文書なのですが、教科書会社はこれにもとづいて教科書を編集し、学校ではその教科書を使って授業が行われます。虎ノ門にある行政機関が学校教育の教育内容を、その根幹から細部にいたるまで、統制制御しているのです。

 「学習指導要領」は、「中央教育審議会」という、学者・文化人・有識者をふくむ見識ある人たちによる討議を経て作成されるものとされています。しかし、その審議の内実は、すくなからず驚くようなものです。中教審委員が何人も、これはおかしい、これには反対だ、と言っているのに、ことごとく無視され素人役人がつくった原案がそのまま文科大臣に答申されるのです。

 これを2022年実施予定の次期・高等学校学習指導要領(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/04/24/1384661_6_1.pdf)の「審議」の過程についてみてゆきます。

 

 自民党の要求に即応し、文部科学省が急遽新設することにした科目「公共」は、かつての「社会科」の一部である「公民科」内の一科目であると同時に「道徳教育」を兼ねるとのことです。

 子供じみた「正義」感の説教や、マイケル・サンデルの際物講義で一躍有名になった「トロッコ問題」のくだらない議論が持ち込まれ、「道徳」というもおこがましい状態です。そこにつけこみ、「哲学者」きどりの物書きや俗流法曹らが寄ってたかって翼賛的に振舞っているのです。


MMXVIII